Lingua furanca.

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気がつくと、ジョバンニは夜の軽便鉄道の小さな電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座ってゐたのです。
向かひ側には、よく知っている少年が座っていました。カムパネルラはずいぶんここに居たの、と言おうとしたとき、彼は答えました。
「ジョバンニ、みんなは別のところを走って乗らなかったよ。」
「もうしばらく待ってゐようか。」
「ザネリはもう帰ったよ。田舎のうちの仕事をつぐようお父さんが迎へにきたんだ。」
カムパネルラは少し青ざめた顔をして苦しいといふやうでしたが、すぐに元気になっていひました。
「ぼく、ネットやサイトを見るのがほんたうに好きだ。あっちには好きなマンガのサイトもある。ステキなサイトだって、きっと見えるよ。」
カムパネルラはそういひながら黒曜石でできた「お気に入り」という地図を見せてくれました。ところどころに「CG」や「ニュースサイト」や、カムパネルラが大好きだった「ネットゲーム」などが書かれていました。
ジョバンニは目をきらきらさせて云ひました。
「この地図、どこで買ったの?ずいぶんキラキラと輝いているねえ。」
「ぼくが作ったんだ。」カムパネルラはそう云ってジョバンニに見せてくれました。「君は作ったことないのかい?」
「どうだっただらう…。」
ジョバンニはポケットの手を入れて「あっ!」と叫びました。そこにはねずみ色をした紙切れが入っていたからです。
開いてみると、表紙には「ブログ」と書かれていました。びっちりとたくさんの文字が書かれ、文字の一部に触れると、別の光がぽうっと光って現れました。
「ジョバンニ、すごいねえ、これ君のブログじゃないか。」カムパネルラは顔をニコニコさせながら云ひました。
「ぼ、ぼくのブログ?」ジョバンニは目を丸くしながら云ひました。
ああ、そうだ。ぼくはブログをやっていたんだ。そしてこれを切符にして、この列車に乗ったんだ。
「君も、この列車に乗りたかったんだねえ。」カムパネルラは云ひました。
「ああ、ぼく君とこの鉄道に乗りたかったんだ。君と一緒なら、どこまででも行ける気がするよ。」
ジョバンニはなんだかうれしくなって、その紙切れを大切にたたみました。
「ところで、どうして君はこの列車に乗ったんだい?」カムパネルラは首をかしげながら答えました。
ジョバンニは一瞬考えましたが、ふと色々なことを一気に思い出しはじめました。
「そうだ。ぼくは楽団にいたんだ。そこでドラムをたたいていたよ。楽しかったなあ。」
「ぼくもそれを、見たかったなあ。ぼくはサックスをやっていたこともあるんだ。」カムパネルラは恥ずかしそうに笑いました。「ぼくもやってたよ!」そう云ってジョバンニも笑いました。
「でもね、その楽団に裏切られちゃったんだ。色々あるのだけれども、それはとてもつらいことだったんだ。」ジョバンニはちょっとだけ悲しそうに云いました。
「ジョバンニ、そんなこと気にすることないよ。君は好きなことをやればいいじゃないか。」カムパネルラは云ひました。
「うん、でもぼくは失意で立ち直れなかったんだ。カムパネルラの云う通りなのにねえ。おかしいね。」ジョバンニはカムパネルラに笑いながら云ひました。
カムパネルラはその笑顔を見て、ちょっと安心したようでした。
「そして、ぼくはこの鉄道に乗ったんだ。気がついたら、じっと外の色々な光景を見て、楽しくなってしまった。自分の悩みなんて小さなことなのだなあ、と思ひながら外を見ていた。そしたらカムパネルラが向かいに座っていて、ぼくはとても幸せな気分だ。」
「ああ、ぼくもだよ。」カムパネルラは云ひました。
「鉄道に乗ってからは、色んなことを書いたんだ。自分の身の回りのこと、興味のあること、大好きなマンガのこと。そしたら、向かひに色々な人が乗ってきて話しかけてきてくれたよ。」
「ぼくもそういうこと、この列車に乗ってからいっぱいあったよ。」カムパネルラは肩をすくめて笑いました。ジョバンニもうれしくなって笑ひました。
 
ふと、ジョバンニはリンゴの香りがするのに気がつきました。
「おや、ジョバンニさんじゃありませんか。」遠くから、青年が寄ってきて云ひました。青年のそばには小さな少女と男の子がいました。
「ああ!あなたは昔会った・・・」ジョバンニはそこまで云ひかけて、黙り込みました。名前が覚えだせなかったのです。
「あはは、気にしないでください。私はあなたが、いったん降りたその前にこの列車で出会っただけですから。」青年は云いました。
「大丈夫よ、あなたにもリンゴを分けてあげるわ。」少女はジョバンニとカムパネルラにリンゴを渡しました。「私もあなたも、居たことを覚えている。それだけで十分だもの。」
「そうだね。ごめんね。」ジョバンニは申し訳ない気持ちになりながら、リンゴを受け取りました。リンゴには「イラストサイト」と書かれていました。
ああそうだ、楽団に入って鉄道から一旦降りる前に、「イラストサイト」や「小説サイト」と書かれたリンゴを持って、ぼくは列車に乗っていたことがあったんだ。あのとき出会った人たちはみんなだうしているだらう。
「でも、ぼく、あなたたちに会えて、うれしひです。これからもこの列車で行きませう!」ジョバンニはうれしそうに云いました。しかし3人は微笑みながら云ひました。
「私たちは次の駅で降りなきゃあいけません。大丈夫、またどこかの列車で、会えますよ。」
「いやだい、ぼくも少しこの列車に乗ってから行くんだい。」青年の横に居た少年は云ひました。
「いいえ、ここでおりなきゃあいけません。私たちは私たちの別の列車に乗るのです。」青年はそう云って二人の手をひきました。
「もし、…もし神様がいるのなら、また会えるのでしょうか。」カムパネルラはジョバンニの顔を見ながら、云ひました。
「そうですね。神様はいます。ほんたうの神様です。だから、きっとまた会えますよ。」
「ぢゃ、さようなら。」少女は手を振りました。
「さよなら」ジョバンニは泣きたいのをこらえながら、ぶっきらぼうに云ひました。女の子はいかにもつらいと云ふ顔をしたあと、一度振り返ったあと黙っていってしまいました。
ふと気がつくと、青年は二人を連れて、大きなサウザンクロスに向かって歩いていきました。そのサウザンクロスには、目立つ文字ように大きな文字が書かれていました。「プロ」「結婚」そして「ガン」。何人かの人が、おごそかに歩いて向かっているのでした。
 
ジョバンニは、とても寂しい気持ちになりながら、また紙切れを開きました。さっきよりも少しだけ文章が増えていました。
カムパネルラも自分の地図を見ていました。少しだけ大きくなっていましたが、少しひびが入っていました。
「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ。どこまでもどこまでも一緒に行かう。自分やみんなの幸いのためならば、ぼくのからだや言葉なんか百ぺん焼いてもかまはない。」
「うん、僕だってさうだ。」カムパネルラの眼にはきれいな涙がうかんでゐました。
「けれども、このネットの宇宙で、本当のさいはひは一体何だらう。」ジョバンニが云ひました。
「僕わからない。」カムパネルラがぼんやり云ひました。
「ぼくたち、しっかりやらうねえ。このインターネット鉄道でたくさん楽しいこと探そうねえ。」ジョバンニが胸いっぱい、新しいものをたくさん吸い込もうとするように息をしました。「ぼく、カムパネルラとたくさんたくさん、このブログ鉄道で楽しいこと探したいんだ。最初は悲しい気持ちでいっぱいになって乗り込んだのだけど、そして列車を一度降りて乗りなおしたのだけど、今なら楽しいことをいっぱい見つけられる気がする。今ならこの紙切れの地図に色々なことを書いて、みんなと笑える気がするよ!ぼくたちどこまでも一緒にいかうねえ。」
「ああ、僕の母さんが向かうにいるよ。」カムパネルラは外を指しました。
しかしそこには「仕事」と書かれた野原が広がるばかりで、カムパネルラのお母さんはどこにもいないのでした。
ジョバンニが向かい側を見ると、カムパネルラの姿はありませんでした。
ジョバンニは誰にも聞こえないやうに窓の外へからだを乗り出して、力いっぱいはげしく胸をうって叫び、のどいっぱいに泣き出しました。
 
気がつくと、ジョバンニは丘の草の上に寝そべっていました。
遠くから「ジョバンニー!」と叫ぶ声が聞こえました。ああ、あれはぼくの友人たちだ。しかしその中にはカムパネルラの声はありませんでした。
ああ、ぼくは行かなきゃ。
ジョバンニは手に抱えたアニメDVDをぎゅっと抱きしめながら、夜の道を声のする方へ向き直りました。
満天の星空の元思いました。ぼくは今、あの列車に乗っているんだ。どこで降りるか、誰と出会うかわらかないけれど、今は明日の仕事と走る鉄道のことだけを考えながら、前を見てまっすぐ走っていかう。きっと新しい景色がたくさん見えるんだ。
そう思ふと、一目散に友人の声のする街の明かりへとかけだすのでした。
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